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13.古いが新しい

20166月、ミラノサローネの期間中に知り合った臼井さんの工房である黒田工房に、取材のため、訪問をした。臼井さんは、文化財の襖・屏風などを修復する伝統工芸に携わる職人である。こうした伝統技術の現場を体感できる機会は滅多にないと思い、シンガポールのLim、京都在住の友人デザイナーと共に、工房を見学させてもらった。

臼井さんの工房は、弟子である崔さんと二人、少数体制の工房だ。こうした木工の仕事は、自らで道具を用意することから始まるのだと言う。様々な木の削り方に対応できるように、鉋までも自らで作成するのだそうだ。釘を使うことなく、木を組んでいく「組子」は、臼井さんの仕事の中でも特徴的な存在だが、木と対話をしながら、組子を完成させていくその姿は、気品すら感じられるものだった。

臼井さんは、文化財の修復という伝統的な仕事に誇りを持ちながら、伝統を繋ぎ、発展させていくにはどうすべきかを、真剣に考えている。近年、日本国内では、工芸品のデザインに力を入れる企業が増え、現代のライフスタイルに合うようなデザインの工芸品が増えたが、一方で、趣や気品が薄れているようにも感じることがある。臼井さんは、まさにそんな工芸の変化の中で、直向きに伝統に向き合っている職人の一人だった。

私たちが、臼井さんの見事な職人技に触れながら感じたことは「時に、古いものは新しくなるのだ」ということ。外国人はもちろんのこと、日本人の若い多くの人も、この現場を体感すれば、「見事だ」と感じるであろう。現在の若者にとって、パソコン上でシステムが動くのは当たり前のことであろうが、手で削られた木々たちが狂いなく組まれていく景色には、大きな驚きがあるに違いない。

「古い」という言葉は、時に中傷的な印象を与えるが、様々な時代の中では、「古い」とされていたものが、「新しい」とも感じるようになるのだ。木工の現場には、まさにそんな魅力があった。

こんな風に、工芸の現場を体感すると、自分自身の日々の暮らしの考え方に気づきや変化が起こる。これこそが「学ぶ」ということなのだろうと思う。

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文:Yusuke Shibata、写真:Takuma Suda