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25. 事業観

人生観、仕事観というものがあるが、「事業観」というものも必要なのではないだろうか。一つの事業に真剣に打ち込んでいると、様々なことに直面するし、そのたびに、多くのことを学んでいる気がする。

「事業」とは、たった一人の人が、誰か特定の一人のためだけに行うものではないし、いつからいつまでに何かをこなせば良いという単純な労働のことでもない。私にとって「事業」とは、社会や人々に何か良いことをもたらすものであって、その対価としてお金をいただき、自分たちの暮らしが成り立つものだと思っている。どんなお客様であれ、この会社に出会えて良かった、ここで商品を購入して良かったと思える、HULSの事業はそんな事業であってほしいと思う。

先日、夫婦の記念日に奥様にプレゼントをあげたいと、一人の男性がギャラリーを訪れてきた。話を聞くと、寄木細工のボックスを探していて、このギャラリーのことを知ったのだと言う。私たちのギャラリーには、残念ながら、お目当ての寄木細工のボックスは置いていなかったが、様々なものを検討したのちに、京焼の花結晶という器を購入してくれた。

検討している最中、「もう少しロマンチックなもののほうがいいかな」とか、「彼女はアクセサリーは苦手なんだよな」と、本当に真剣に相手のことを考えてギフトを選んでいて、なんだかこちらも嬉しくなってしまった。

決して派手なタイプには見えないシンガポール人の男性だったが、わざわざ仕事の後にギャラリーを訪れ、あんなにも真剣にギフトを選んでいる姿に触れると、心に響くものがあって、その日は、とても良い気分になった。

「工芸品のストーリーを伝える」というフレーズは、時にメーカーの側に立ちすぎてしまって、その品を使う人に向けたメッセージとして、最適ではないときがあるのかもしれない。

この男性にとって、何よりも大切なのは、彼の気持ちがこの工芸品を通じて、彼女に伝わるかどうかなのであり、そのための助言を私たちは伝えてあげなくてはならない。「この器はこのように作られていて」という説明ではなく、「この器は、花をモチーフにした色美しい結晶の器であり、あなたの想いをきっと伝えてくれますよ」と。

私たちが向き合うべきは工芸品であり職人であり、かつ、それを使ってもらう人々の暮らしなのだ。そのためにも、私たち自身が、日々の暮らしを見つめ、その日々を活き活きと過ごすことが大切なのだと改めて気づいた出来事だった。

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 文・写真:Yusuke Shibata