KOGEI STANDARDの開設

2016年4月20日、ついにHULSは、日本工芸のバイリンガルオンラインメディア「KOGEI STANDARD」を開設した。

「KOGEI STANDARD」は、一般的な工芸品紹介のメディアとは異なり、工芸メーカーそのものや、そこで働く人々に焦点を当てているところに特徴がある。全て自分たちで現場に取材に行き、独自の写真を撮影し、経営者や事業の責任者の方に、会社の成り立ちやその人の育ちについて、丁寧に話を伺う。立ち上げ当初は無我夢中に取材をしていたが、結果としてこの一つ一つの取材が、現在のHULSの財産になっている。

このサイトの主な対象は、外国人とした。近年、海外からの日本の文化・工芸品への注目度は高まっていると感じてはいるが、外国人が工芸メーカーの情報に独自に辿り着くことはまず難しい。磁器と陶器の違い、磁器の中でも有田焼と美濃焼の違い、有田焼の中でも何百もある窯元。それらを英語で検索して自分好みの窯元を発掘するのは、ほぼ不可能に近い。海外に工芸を展開したい人がいて、そんな工芸のことを知りたい人がいる。まずは販売するよりも先に、こうした確かなニーズに焦点を当ててみようと思った。

「KOGEI STANDARD」は、その名の通り「工芸」の紹介サイトだが、工芸を英訳せずに、そのまま「KOGEI」とすることは、HULSのスタッフ全員で決めた。小倉織の染織家である築城さんにそのことを伝えると、「工芸という言葉を使ってくれて、私は嬉しい」と言ってくれた。日本の工芸に携わる一人として、工芸品が「Craft」と一括りにされてしまうことに、少しの違和感を感じていたとのことだった。この名付けは、そんな築城さんの言葉にも励まされた。

海を越えても、変わることのないもの
海を越えれば、生まれ変わるもの
どちらにも、未来はある

これは「KOGEI STANDARD」のメッセージの一文。工芸の海外展開では、頻繁に現地化する必要性を聞かれるけれど、そうした展開も一つだし、本質的な価値を丁寧に伝えていくことも、また一つなのではと思う。日本から、海を眺めたときに、大きな希望を持ってもらいたい。そんな想いが込められ、結果として、HULSの工芸の海外展開における宣言文のようなものになったような気がする。